『オープン・グラインドハウス』は吉祥寺シアターのレジデンスプログラム“みせびらき”の一環として、12月10日〜15日までの6日間に渡ってバストリオが行った公開滞在制作です。
“多くの人に劇場と出会ってもらう”というコンセプトのもと、通りに面した搬入口を開け放ち、誰もが訪れることができるリビング(生きている場)のような場を立ち上げ、そこで新作パフォーマンス『グラインドハウス』を制作しました。14、15日にはパフォーマンス上演も行いました。
期間中は「衣・食・住」にまつわる様々な企画を同時進行で進め、コーヒー1杯をお金以外のモノと交換しパフォーマンスのための素材を集めるコーヒースタンド『Grind House Coffee』や、パフォーマンスのための衣装をつくるブランド『MOUNTAIN OF CLOTHES』の立ち上げや、複数の人が異なる視点で切り取った吉祥寺の街の映像をつなぎ30分の映画にする『だれかのどこか』といった誰でも参加可能な企画を通して『グラインドハウス』を制作するなど、「かきまわす」という意味を持つグラインドのままに、全てがごちゃまぜなった家を6日間の記録です。
1st「水のかたち」と2nd「落ちる散る満ちる」と同じく、その場で起こる事に対して働きかけて録音した音源です。
吉祥寺駅前から吉祥寺シアターへ向かって歩きながら録音したテイク。
オープングラインドハウスは吉祥寺シアターにて2018.12/10〜12/15の6日間に開催されたのですが、オープン時間がpm12時。連日、扉を開けるという儀式のようになっていたった。その初日の記録。
初日、オープンしてから出演者全員が一斉に各々の制作にとりかかったのですが、美術の秋良さん、音楽家・デザイナーのタカラマハヤさん、役者の酒井さんを中心に、空間のど真ん中に、最後の晩餐にあるような長机を設置する為に長い時間をかけて机を製作する音が延々と鳴り続けていました。その不規則に鳴る作業音や話し声などに対してドラムでアプローチしてみたテイクです。最後あたりの酒井さん胡散臭い関西弁が面白かったのでダブ処理をしています。
初日と2日目にはアンちゃんという犬が滞在してました。アンちゃんが来場した際の記録。今野くんの言葉通り興奮してたみたいです。タンタン鳴ってる音は尻尾の音。その後は場に慣れたのか、アンちゃんはとても静かでした。
オープン・グラインドハウスでは、吉祥寺シアターの厨房で出演者と来場者の方々の為に1人黙々と料理を作る男が居ました。その男の記録。途中で波紋音をちょこっとだけ鳴らしてるのはやめておけば良かったと思ったのですが、それではなく、かなり混ざっちゃったのですが、料理の音に対してずっと音鳴らしてます。
初日の晩餐の風景。長机に出演者全員が座っての晩餐の記録。
とある食べ物を巡って大ジャンケン大会が突如勃発した際の記録。ちなみにこの争いに松本とタカラマハヤさんは参加していません。参加していませんといいますか、僕とタカラさんは先に食べてしまったからです。残り3つになってしまったその食べ物を争っている風景です。これだけ争うくらい求められたらば、作った方々と食べ物も、してやったりだと思います。
オープングラインドハウスに参加してみて、場の音が賑やか過ぎる場で、人を対象に作品作りをした事がなかったので初日から困り続けました。そんなテイクです。途中からの銅鑼の音は3日目に吉祥寺シアターの3階にある稽古場で1人静かに録音しました。ただ、銅鑼の音が人の声にも聴こえるので、会場の録音を微かに入れてるかのようにも錯覚するかもしれません。銅鑼終わりにフェードインしてるので、そこは橋本さんと秋良さんと酒井さんの声が聞こえてきますが、途中には全く入れてません。ちなみにプツっと銅鑼を切ったのは、この3人の声が会場に居た人たちの中でとてもよく聴こえてくる音だったのでそうしました。秋良さんの笑い声はよく抜けるので大変悩まされました。笑
グラインドの意味を意識して編集しました。
grind…(うすで)ひく,細かく砕く,すり砕く,すり砕いて作る,(硬いもので)磨く,とぐ,研磨する,ぎしぎしこする,(…を)(…に)ぎりぎりとこすりつける,回す,粉をひく,うすをひく,(…に)粉になる,ひける,(…に)ひける,きしる,(…で)きしる,ギーギーする,(…に)精を出す,こつこつ勉強する,ひくこと,すり砕くこと,(粉の)ひき具合,つらい単調な仕事,退屈でいやな仕事,こつこつ勉強する学生,がり勉家,グラインド
2日目。開始早々1人、井の頭公園へ。その時の録音テイクです。2日目にして屋外に飛び出しました。笑
井の頭公園の井の頭線の井の頭公園駅に程なく近い池あたりで録音したテイクです。最初ら辺りに鳥の鳴き声のように聴こえる音はお爺さんが鴨に反応してもらいたくてずっと口笛を吹いている音です。お爺さんが吹いても全然鴨が鳴かないのでお爺さんは諦めて去っていったら鴨が鳴き出すという。笑
井の頭公園に滞在していたのはたかだか1時間程度なのですが、この場面に出くわした自分のひきの良さに嬉しく思います。
吉祥寺シアター前にあるビルに室外機がかたまって沢山あったので、そこで録った音と、井の頭公園から吉祥寺シアターに戻る際にたまたま見つけたやたら良い音が鳴ってる室外機があったので重ねてみました。
grindという単語の意味を調べていたら、類語に素粒子という意味があったのでそんなタイトルにしました。3階の稽古場で録音した、よくバストリオの公演でも使用している音のなる砂時計で録音しました。無音ではありません。
初日と2日目、秋山さんは舞台袖の楽屋で作業をしていたのですが、そこは他の出演者からの音の影響を殆ど受けない場だった事もあり、その作業音がとても良かったです。その記録。
オープングラインドハウスでは来場者の何かと珈琲を交換するという試みが初日から行われていたのですが、その珈琲を淹れている音の記録です。普段とても抜ける声で話す橋本さんが、僕が音を鳴らしながら録音しているので、全然声を発さずに、最後に一言「出来ました」と言ったところにグッときました。
オープングラインドハウスに出演した出演者全員が在室。そして、吉祥寺シアターのスタッフさん全員と来客者の方々が多数居たの時の録音。
一言一句聴き取る事が難しい賑やかな場の音。
特別に際立っている音が無いので面白いと思いました。
在室とは逆に、出演者が秋山さんと岡村さん以外誰も居らず(この2人は出演者の中でも特に静かな2人でした)、吉祥寺シアターのスタッフさんも佐藤さんしか居らず、来客者は誰も居なかった時の録音です。在室と不在を比べてみて思うのは、長年屋外で自然の音を対象に作品を作ってきましたが、屋内で人を対象にして録音をしてみると、音の価値観がまるで反転していた事です。もちろんそれだけではありませんが、どちらでの録音も、これまでの経験からか初めは静けさを求めて、音と音との間を求めてタイミングを計っていたのですが、いざ録音を始めてみると、対象が人や街中だった場合、賑やかな場の音の不特定多数の賑やかさの方が面白く、録音テイクを聞き直した際にも在室の方が不在と比べると音をよく聴こうとしている自分が居ました。
閉場時間はpm21時。閉場も連日儀式のようになっていました。このテイクは4日目の閉場の際の記録です。
5日目、ふと気がついたら誰でも使用してよいマイクが会場に設置されていたのですが、来場した子供がそのマイクでずっと話していたら、不意に映像・撮影などで参加していた和久井さんがアコーディオンでジングルベルを弾き始め、子供が歌いだしました。最後に言っている「この虫籠には虫が入っていますか?」というのは、僕が設置した虫籠にマイクを立てていた展示物に反応した様子です。
役者の小川さんが、来場者が珈琲と交換したレインボースプリングというバネのオモチャを、中央に設置された長机の端っこに段段を作り、その段にレインボースプリングを上手いこと転がすという事をパフォーマンスの際にやろうとしていたのですが、パフォーマンスの際に小川さん、橋本さんがチャレンジしたのですが上手くいかず、レインボースプリングと珈琲を交換した子供がやってみたら…という際の記録です。
美術の秋良さんが足りなくなった木材を調達しにいき、1人では抱えきれない量を運んでいました。帰り道、途中でバテていたところ、近所に住むお爺さんが手伝ってくれたそうです。そして、木材運びを手伝ってくれたところ、橋本さんがおじいさんにバストリオの活動について説明をしたところ興味を持ったそうです。この際、お爺さんがコーヒーと交換したものタグには「重い縁」と記入してありました。そしてお爺さんが訪ねてきてくれたのは最終日のパフォーマンス中でした。ギターを片手に約束通りやってきてくれました。そしてテネシーワルツを歌ってくれました。その時の録音です。
これまでのバストリオの公演に多数出演してきた役者の砂川さんが珈琲と交換したのは、砂川さんが2018年にインドに行った際のエピソードで、ヨガのレッスンの際に歌っていた歌でした。
その歌をパフォーマンスの際にみんなで歌うという事になったのですが、その練習風景の記録です。